開幕以来3試合で1Vゴール勝ちを含む3連勝、勝ち点は8。昇格後初めての試合という、極めて重要な開幕戦で優勝候補の一角、横浜F・マリノスを撃破。そして第2節から堂々の首位に立ち、前節には優勝候補、名古屋グランパスを破り首位を守るなど、J1リーグのチームに大きな驚きを与えていた。
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4月1日試合当日、いつもの試合前のミーティングでは多くの選手は緊張していた。当然のことである、しかし、そこにはどこか重苦しい空気が漂っていた。
J1に昇格したばかりのチームが、優勝候補を連破し、首位に立っている。我々は勝てるだろうか、どこか不安な気持ちがあった。
そしてミーティングの最後にミョンボが口を開いた。
「FC東京が、実力で横浜F・マリノスや名古屋グランパスに勝ったとは思えない。勝とうとする強い気持ちで勝ったのだ。今、J1のチームの中で、FC東京が
勝ちたいという気持ちを、どのチームよりも強く持っている。
だから、FC東京以上に勝ちたい気持ちを持たないと今日の試合は勝てない」
そして付け加えた。
「昨年までJ2だったチームに対し、J1のチームとしてはこれ以上負けられない。長くJ1で戦い続けているチームとしてのプライドを持って戦おう」
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柏の葉スタジアム、15時01分キックオフ。
試合は前半24分に大野敏隆のクロスに飛び込んだ北嶋が、絶妙のヘディングシュートを決め1-0とレイソルが先制。しかし、FC東京も40分にアマラオが決め1-1の同点。
後半23分にレイソルが勝ち越しのチャンスを掴む。
右サイドからのフリーキック。左ウィングバックとして交代出場した平山智規が蹴ったボールは、鋭くゴール前にカーブしながら飛んだ。FC東京DFはこれをクリアしきれず、ヘディングしたボールは自身のゴールに飛び込んだ。オウンゴールだった。
しかし、FC東京は全くあきらめない。30分に佐藤が決めて2-2の同点に追いついた。
試合は延長戦に入った。
延長後半13分、試合開始からは118分。
ボールが左サイドを流れ、次第にFC東京ゴールに近づこうとするとき、ミョンボはいつの間にかスルスルとFC東京ゴール前に進入していた。
FC東京DFはこの瞬間、ミョンボを捕まえきれなかった。予期せぬ時、予期せぬ所に思わぬプレーヤーが現れた。
ミョンボのアジア最高のリベロと呼ばれる理由は、実は危険察知能力の高さ、読みの優れた守備力の高さからだけではない。かつてのサッカーでの守備のエキスパート、いわゆるスイーパーではなく、リベロと呼ばれる所以は、実は攻撃力の高さにある。
予期せぬ時、予期せぬ所に現れて得点に結びつく決定的な仕事をすることができるプレーヤーがミョンボである。
多くの場合、ミョンボのプレーは決定的なラストパスを出すところで完結する。しかし、この日のプレーはその次の段階。つまり、フィニッシュの仕事だった。
相手が最も嫌うタイミングに、最も危険なスペースに進入したミョンボに、ぴったりのクロスが平山から上がった。
胸トラップ。左足、一閃、ボールは昨年まで柏レイソルに所属していた土肥洋一が守るゴール右隅に飛び込んだ。
得点をあげた後、どうだと言わんばかりの、観客席に向かってのポーズが印象的だった。
2000 其の1 終わり
text,photo by Takahashi KENT/高橋建登 無断転載を禁じます
2008-08-23
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